こんにちは
琉球治療院 鍼灸師の関 忠雄です。
鍼灸治療の将来について、鍼治療・灸治療・ヨーロッパ医学(薬物)の
関係について考えてみました。
◇鍼治療
鍼は直接に神経組織に刺激を与える事により、知覚神経(痛み・しびれ)
運動神経(マヒ)自律神経(しびれ)に物理的刺激を与えます。
これに反応して身体は、神経組織に新しい条件をつくろうとします。
条件によっては過剰に反応するというケースもあるでしょう。
◇灸治療
・間接灸(せんねん灸)は結合組織に温熱刺激を加えます。
結合組織は、伸展します。(第一度火傷:ポット赤くなる程度で充分)
これにより神経組織は、外からの緊張がほぐれ刺激が軽減されます。
・直接灸は、身体に火傷毒素(ヒストトキシン)を造ることにより
身体の免疫力を強めます。
このように、直接灸と間接灸は全く違う効果を持っています。
戦争の前は栄養状態が悪かった為、直接灸が研究されました。
しかし、今は全く条件が異なる為以前の灸の研究は意味を持っていません。
灸治療は、ヨーロッパ医学にこの様な治療手技がないために意味不明の治療となり
別の存在になっています。
◇薬物治療
口から入った薬物は胃と腸へ送られ小腸から血液に入り門脈を通り肝臓へ
送られます。最初は有害物質の扱いを受ける薬物も分解・解毒されたあとに
心臓運ばれ患部に移動します。そして患部に移動した後に、薬物の効果を
発揮します。
※ペインクリニックの神経ブロックは結合組織を切って直接神経組織に薬物を
加えます。しかし、鍼治療と違って単なる物理的刺激の鍼治療ではなく薬物に
よる神経の鈍麻による事が鍼治療と異なります。
最初からヨーロッパ医学には直接に神経を刺激する手段がなかったので、
直接に神経組織を刺激するという発想は生まれなかったと思われます。
若杉文吉先生が神経ブロックを考えついたのも、そのもとには鍼治療が
あったのかもしれません。
現在のヨーロッパ医学で神経ブロックがどのような位置にあるのかよく
わかりません。恩師の倉島宗二先生は、神経ブロックの原理で鍼の理論を
説明しました。そして、その鍼の神経線維切断説は医学者や一般の人に
鍼治療への不当な偏見を与えてしまいました。
(注射針でブスブス刺すようなイメージ)を。
現在のヨーロッパ医学で考える鍼治療は、神経組織を直接刺激する事は考えて
いないので「治療のための鍼灸」ではなく「リハビリテーションの鍼灸」に
なっています。
鍼灸治療が直接に神経組織を刺激できるのに対し薬物治療は、消化組織を
経由するために効果が現れる時間が長いこと。それと同時に薬物も肝臓で
分解.解毒されるため傷ついている組織に到着する頃には効果が弱まって
しまっている事です。
この様に古代中国人が作った神経組織を直接刺激するという鍼灸治療は、
現代ヨーロッパ医学で理解不明な治療手段になってしまったのです。
そして、中国の北東部でできた為にヨーロッパ医学はその手技を知る機会がなく
近代の(1840年)アヘン戦争により欧州列強が勝利した事も加わって中国文明を
必要以上に蔑軽する風潮をもたらしました。
19世紀のヨーロッパ医学(特に細菌学のパスツール等の)すぐれた科学技術を
背景に多くの研究があり自らが最高と自負しています。
しかし、その一方で中国医学の優れた部分を無視するのは如何なものでしょうか?
鍼灸治療という手段は、中国医学がみつけていた神経組織を直接に刺激できる
すぐれた治療手技なのですが、正当に評価されていません(鍼が注射針に比べて
細いのは特別に意味がある)。ヨーロッパ医学は限りなく発展しています。
しかし、あまりに多くの分野に進み過ぎたためにある部分を見逃しています。
鍼灸治療も灸治療にもその見逃している重要な部分があるにもかかわらずです。
訪問鍼灸治療に携わる人達は、ヨーロッパ医学(病院)の治療の欠けている部分を
鍼灸治療は補っているのだという自信をもって、医学全体を見て将来に鍼灸治療を
残して欲しいものです。